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川の字

退院してから本当の新しい生活が始まるわけで、産んでおしまいというわけではない。
だけど生まれる前は生まれた後のことなんて何も考えていなかった。

母親学級でやけにリアルなドラマ(舞台は同じ病院、夜中陣痛に気付いて病院に行くところから始まる病院スタッフによる寸劇)を観たとき、不覚にも出産の場面で涙してしまったものだから、自分のときももちろん感動して号泣する感じかと思いきや、全然そんなことはなかった。

他では例えられない、体に引っかかっていたものが一気に抜けたようなすっきりとした感覚があり、次の瞬間気がついたら目の前に初めて見る生き物がいた。わぁ、可愛いというより不思議だった。目の前で起こったことが理解できなかった。自分が産んだのに人ごとみたいに呆然としている私。

そして分娩室に響き渡る泣き声。ぼうっとした頭で上を見上げていたらお母さん、赤ちゃん見てくださいと助産師さんに何度も言われる。

あぁ、そうか自分が産んだのか、と隣の台に横たわり指を口に咥えきらきらした黒目でこちらを見ている我が子を見てようやく自覚する。
こんな瞳は初めて見た。

これが今まで自分の腹の中にいた子なのか、げしげし蹴っていた子なのか、エコーでみた粘土みたいな顔をした子なのか、たった数時間前に人生最大の痛みを起こさせ、たった今すぽんと出てきた子なのか、つくづく不思議である。


よく晴れた静かな昼下がり。
その子はすやすやと私の隣で寝ている。その隣には最初は心配だからということで一緒に寝ている母がいる。

我が子の寝息と母の寝息。すやすや、くうくう。三世代が川の字になって寝ている。
何とも不思議である。母はお腹を痛めて私を産み、その数十年後、私は隣で菩薩みたいな安心しきった顔で眠っている子を産む。暖かな日差しの中、三人で昼寝をしている。
母は私を産んだ時、いつかこんな風に川の字になって寝るなんて想像し得ただろうか。

川の字になって寝ている、なんて小学生が国語の授業で書く作文みたいな稚拙な表現だが、それ以外の事実はここになく、この事実が私に母になったと自覚させ、我が子をただただ愛おしいと思わせる。
何度考えても不思議だ。
これから不思議なことはもっともっと続くだろう。


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by fukadaumiko | 2014-11-25 12:35 | 日常 | Comments(0)


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